
お客様の発言を反復することの重要性が教え込まれます
小売業にとってのクレーム対応は、お客様を逃すかどうかの分岐点になります。そのため百貨店やショッピングモールなどが実施している研修では、新入社員に対してクレームの対処法もレクチャーされているのです。厄介なクレーマーの場合は基本的に売場の責任者が対応しますが、初期対応を間違えるとクレーマーの怒りが増長されてしまうので、新入社員も研修で対処法を学んでいます。研修の最初のほうにレクチャーされるのは、お客様の言葉を繰り返すことの重要性です。たとえば「この商品は、不良品だったじゃないか!」と言われたときに「具体的にどの箇所が不良品だったのかを確認させていただけますか?」と返すと、お客様の感情に火がついてしまうことがあります。この場面では「当店で購入された商品が、不良品だったんですね。誠に申し訳ございません」と発言することが推奨されます。クレームを言っている人は、自分が言った言葉を店員に繰り返されたうえで謝られると、怒りの感情が落ち着く傾向があるのです。
声のトーンをわざと変えて会話する練習をします
また研修では、クレーマーと声のトーンを変えて話す練習も行われます。高い声でまくしたてられているときに、店員側も高い声で会話をすると、お客様がヒートアップしてしまうことがあります。この状況では店員側が意識して声のトーンを下げることで、相手の気持ちをクールダウンさせることにつながるのです。クレーム対応においてはひたすら謝罪しているだけだと、状況が改善されない可能性もあります。だからこそ言葉を繰り返したり声のトーンを変えることの効果が、新入社員のうちから研修で教え込まれているのです。
社員教育とは会社のルールや規則、また仕事を円滑に行う方法を教えることを指しています。ただ単にスキルを教えるだけでなく、どのような考え方をして仕事と向き合うか、どうチームとして働くかを教えることです。